大阪ロケが凄い、映画「太陽の墓場」と新今宮界隈。

大島渚監督若かりし頃の映画を、ン10年振りにDVDで観ました、大阪のスラム街にうごめく、やくざ・港湾労務者・売春婦・ルンペン・・そんな人たちの汗と体液(!)でぎらぎらしたような作品です。c0191977_1852134.jpg(1)

映画の舞台は真夏の大阪西成界隈。今の季節に観るとなんとも暑苦しい~けど目が離せない・・・

1960年、 松竹、
大島渚監督。
佐々木功、炎加世子、津川雅彦、戸浦六宏、川津祐介、田中邦衛、渡辺文雄、佐藤慶、伴淳三郎、その他出演。

なんと、今から見れば豪華キャストですねえ。

(2・3)実質的な主役を演じた炎加世子さん、なかなかセクシーで強烈です。10016926552_s.jpgimgff85e252zik7zj.jpg

ここに写っている人たち。左から、津川雅彦、川津祐介、炎加世子(後姿)、戸浦六宏、そして右端は『宇宙戦艦ヤマト』を歌うず~っと前の佐々木功です!img2f09b5c1zikczj.jpg10016926554_s.jpg(4・5)

男達は管理売春で喰っている津川雅彦率いるやくざの組仲間。炎加世子は港湾労務者の血をヤミで売りさばく商売。~そんな人しかでてこない映画です。

鉄的には、背景に見える南海電車の高架線が、重要な構成要素として印象に残ります。チンピラたちが血なまぐさい争いをしてる斜め上を、高野線のズームカーが走り抜けるシーンもあります。(6・7)太陽の墓場01.jpg太陽の墓場.JPG

img2106b15ezikfzj.jpg(8)

佐々木功さん、韓流スターかジャニーズ風の甘いマスクでかっこいい~まるで別人ですね。

南海の高架をくぐる土手の下には、伴淳三郎が仕切っているバ●ヤ部落(私の世代の方なら●の文字がなんだかはお分かりですね)があります。imgb9234604zikazj.jpg imgd7fac76dzikezj.jpg(9・10)ここも映画の重要な舞台ですが、土手の上には非電化時代の国鉄関西線が走っています。太陽の墓場02.jpg(11)

ラスト近くでは、津川雅彦と佐々木功が2人もろとも汽車に轢かれて死ぬ、というシークエンスがあります。

南海の高架線と関西線が交差する地点、といえば・・・


いまや環状線と南海の乗換駅として賑わうここ!じゃあないですか。新今宮02.JPG(12)新今宮.JPG(13)           大阪出張に行くと、いろんな電車を効率よく駅撮りするのに絶好の場所として、何度か出かけた新今宮・・そういえばこの駅が出来たのはいつでしたっけ?(=国鉄は1964年、南海は1966年)

(14~16)新今宮06.JPG新今宮05.JPG新今宮07.JPG


こちらはしばらく前(2007年)に偶然撮っていた新今宮駅近くの南海の高架線です。ガランとした雰囲気が印象的でした。独特の架線柱のカタチと高架下の倉庫(?)の窓にご注目!新今宮03.JPGimg2f09b5c1zikczj.jpg(17・18)~やっぱりここがロケ場所のようです!全くの偶然とはいえ、この辺を歩いたときなんとなく気になってしまったのは、映画の記憶があったからでしょうか?(=私がこの映画をはじめて観たのは大学生の頃でしたから、封切られてから10年以上経っていました~)

新今宮駅が出来る前、ロケが行われた頃のこの界隈は、こんな映画の舞台になる場所だったのですかね(実際はここまで凄い場所ではなかった・・・と思いますが)?

ま、今でもちょっと駅から離れるとヤバイ雰囲気が濃厚な場所ではあります。(乗換だけで駅から出なければ危なくないですけど・・・)新今宮04.JPG(19)

その他、あいりん地区(映画撮影当時は釜ガ崎)を貫く阪堺電車(同じく当時は南海大阪軌道線)のYゲルやブリル台車、建設中の環状線の高架橋など、汗と血にまみれたどろどろぎらぎらの人間ドラマの背景に、それぞれ印象的に登場します。

阪堺01.JPG(20)            阪堺線の登場するシーンのひとつは、このガード。売春婦の一人と逃げようとした川津祐介が刺されて土手に倒れ込む後ろを、モ205(だと思います)のブリル台車が通り過ぎていく・・・・

バ●ヤ部落が暴動で燃えて、一夜明けたラストシーンでは、炎加世子と商売仲間の濱村純が、この街を捨てて去る(といっても売血商売には変わらない~)ことを暗示するように、南海高架下のアーチをくぐっていくのでした。

img8e8e5686zikdzj.jpg(21)

image005.jpg考えてみると「ALWAYS~3丁目の夕陽」同じ時代を描いていたのですなんたる落差でしょうか!

この記事へのコメント

  • hanamura

    シビレル聖地巡り(?)です。まず映画を見たい!
    私の時代には尾道三部作とか、ブームが出来上がってました。
    2012年08月24日 07:04
  • Cedar

    ■hanamura様
    痺れる、ってか、ビビります。なにしろ日本一、治安が危ないというエリアですから。阪堺電車の撮影もこのエリアでは命がけ?
    2012年08月24日 07:23
  • Cedar

    ★シュウチャン様
    ★あるまーき様
    nice!ありがとうございます
    2012年08月24日 07:24
  • maipenrai

    出ましたねぇ…久々の「鉄と映画」シリーズ。
     1960年公開ですから、私も見たのはずっと後になってからです。タイトルからして「太陽の季節」へのアンチテーゼ、なんて言われてましたね。のちの大島作品(私が最初に見たのは「忍者武芸帳」w)と比較すると、南海…おっと難解さがみられないものの、東京の軟弱な高校生には強烈なインパクトでした。
    「鉄と音楽」シリーズも、また読ませていただきたいなぁ…。
    2012年08月24日 08:47
  • EF510-230

    今ではこの地区も大分おとなしくなってきているようで、阪堺電車の撮影もあまり危険を感じなくなりました。
    2012年08月24日 11:39
  • Cedar

    ■maipenrai様
    この映画を観たとき、高1の時に初めて乗った阪堺線の沿線に広がっていた西成の景色や、遊廓のムードが残っていた飛田界隈を思い出しました。東京とは全く違う雰囲気に圧倒されました。南海の高架線の周りも映画の頃のような低い街並みが広がり、通天閣と大阪城以外、高い建物が無かったです。

    『忍者武芸帳』ご覧になってるとは~なかなか嵌ってましたか?
    『夏の妹』は?

    ■EF510-230様
    大人しくなったというより、長引く不況と住民の高齢化で瀕死状態なんだそうです。
    東京も同じですね。
    2012年08月24日 15:16
  • なにわ

    あの弁護士上がりの市長も、なんとかしたいようです。
    さすがに写真とってても、何も言われなくはなってますが。
    でも、東京のほうがマシでしょ。

    津川雅彦や佐々木功(和田の野郎、また大和を外したな)がロケをした場面、さすがに環状線の北側は浪速区ですから。木津市場の倉庫に使ってるんでしょう。
    2012年08月24日 18:05
  • maipenrai

    再コメ失礼します。
    >『夏の妹』
     栗田ひろみ、可愛かったですねぇ~(はぁと)。
    2012年08月24日 18:38
  • Cedar

    ■なにわ様
    ロイヤー上がりのメイヤーは生活保護費カットしたいだけでしょう。TV局動かして不正受給の特番作らしてます。

    5年前に南霞町の踏切で阪堺撮ってたら、目がイッテるおっさんに懐かれた時は怖かった。
    ■maipenrai様
    再レス失礼します。
    >夏の妹
    リリぃの入浴シーンも良かったあ!

    ★プント様
    nice!ありがとうございます
    2012年08月24日 20:08
  • nd502

    大阪に行くと今でもこのエリアを散策します。
    スナップはなかなか撮れませんが・・・(汗)
    佐々木功もこの頃はヅラじゃなかったでしょうね。
    2012年08月25日 01:15
  • Cedar

    ■nd502様
    あのエリアを散策されるとは凄い・・・
    阪堺電車の窓から眺めるのが精一杯です。

    佐々木功はもちろん、津川雅彦も別人のようです。

    ★フジトモ様
    nice!ありがとうございます
    2012年08月25日 07:16
  • EF510-230

    あの地区も東京の山谷と同様、外人観光客向けの安宿に転身しているところが多いようです。
    2012年08月25日 11:53
  • Cedar

    ■EF510-230様
    バックパッカーは世界中どこでもああいう場所に入りこみます。
    バンコクやクアラルンプールもそんなエリアがありました。
    2012年08月25日 18:46
  • UZ

    今回は大阪市の西成区界隈ですね。橋下市長就任後色々と注目されている区でもあります。

    尼崎も特に阪神沿線はディープな雰囲気が残っています。
    高架化により様変わりしたように見えますが、それでも混沌とした街並は今でも点在しています。
    2012年08月26日 00:28
  • Cedar

    ■UZ様
    この映画の鉄風景は大学生の頃に観た印象が強烈でした。日本に限らず古い映画には、鉄道が効果的に背景として使われてる例が多いです。

    この映画の鉄道は、映画の登場人物や出来事に対して、真っ只中を通過するが係わり合いにはならない=別世界から見る人のシンボルとして使われている感じがします。
    2012年08月26日 00:53
  • Tad

    この映画の二年後に日活で撮られた「当りや大将」もほぼ同じあたりでのロケのようです。が,この周辺のことはよく判らないので,一度見ていただくしかないですね。
    拙宅で鑑賞会しますか?
    2012年08月26日 01:24
  • Cedar

    ■Tad様
    「当たりや大将」についてはお話伺って興味深々でしたが未だ観る機会がありません。
    ぜひ観たいなあ~!
    2012年08月26日 07:44
  • のり

    新今宮あたりの南海の高架沿い、ディープですね。
    南海の架線柱は本当に独特で、いかにも「南海」という感じがしますね。
    映画に登場するモ205形、「めし」以来でしょうか。
    2012年08月26日 08:39
  • Cedar

    ■のり様
    お暑うございます。
    この辺りは始めて関西に行った昭和42年に阪堺を撮影するために今池~飛田界隈をうろついたときの印象が強烈でした。夜の新宿が仕事場で、余程でないと町を怖がる事はない父が、少し躊躇うほどの場所でした。

    この映画での阪堺線の登場は、モ205は土手の上を行く下半身=ブリル台車、別のシーンでは道に倒れたやくざのバックの空を滑っていくモ161(?)のYゲル、というように部分的です。露骨に写されてはイメージダウンで迷惑だ。と南海側は考えたのかも?

    ま、そういう映画ではあります。
    2012年08月26日 09:49
  • Cedar

    ★akihiro-s様
    ★COLE様
    ★denta60様
    nice!ありがとうございます
    2012年08月26日 09:51
  • Cedar

    ■のり様
    追伸です。南海の高架と架線柱の立派さ強く印象に残りました。あの架線柱はシカゴのイリノイセントラルの架線柱がモデルだそうですね。
    そんな立派な線路の周りに広がる貧しそうな町並み、イリノイセントラルの沿線にも同じような場所がありましたね。
    2012年08月26日 09:56
  • 狂電関人

    Cedarさま

    この頃の映画を見る楽しみ、電関人もしきりに背景に出てくるEF58や、
    私鉄、駅の情景などなど気がつくとあらすじが判らなくなるぐらいに
    そちらを追ってみていることが多いです。

    大阪は、八尾の方に叔母がいて小学生高学年になると一人旅で大阪に
    行ってました。40年代の山陽・東海道線や大阪環状線等の車窓風景は
    特に大阪界隈が強く印象に残っています。この駅の環状線のこっち側には
    行っちゃだめだとか言われると帰って興味がそそられたりしたものですが、
    西成界隈はちょっとシャレにならないですね(冷汗)。
    2012年08月26日 11:04
  • Cedar

    ■狂電関人様
    以前に、昔の日本映画の鉄登場シーンばかり集めたDVDが作れないか!?というのを欲と2人連れで考えたことがありましたが、著作権やら監督の許諾やら難しそうで諦めました。
    商売には出来なくても個人的にはやってみたい作業です。

    東京と大阪の空気の違いは万博前まで、かなり濃厚に 残っていましたね。当時の西成(釜が崎)は凄かった~日本のサウスブロンクスって感じでしょうか?
    2012年08月26日 18:42
  • Cedar

    ★★★あおたけ様
    nice!ありがとうございます=なんと4000個目のnice!です。

    ★★★何時もご覧戴いている皆様のご支援のおかげで、ものぐさCedarがここまできました。今後ともよろしくお願い致します!
    2012年08月26日 18:45
  • 京葉帝都

    松竹時代の大島渚監督の作品では、「愛と希望の街」「青春残酷物語」を観ました。前者には地上時代の京浜急行立会川のシーンが出てきました。「太陽の墓場」に出てくる戦前からの南海の立派な複々線の高架線からミナミとその沿線の繁栄ぶりが伝わってきます。この映画もDVDがあれば観たくなりました。この当時の映画の主演女優さんたちはシンボル的な意味で現在以上にインパクトが強かったのではないでしょうか。
    2012年08月27日 03:09
  • Cedar

    ■京葉帝都様
    当時の日本映画は、様々な才能が集うパワーがありました。監督、役者、女優。
    炎加代子さん、心中未遂や大胆な言動でシンボル的でした。
    今はどうしてるんでしょうか。
    鉄道は時間と空間を展開させるのに、映像言語として絶好の存在でした。
    2012年08月27日 14:15
  • Cedar

    ★アリス様
    ★trigraf様
    nice!ありがとうございます
    2013年05月09日 20:21
  • お名前(必須)

    今、見てます

    当時はまだ生まれてないけどタイムスリップした気分
    2016年04月27日 16:24
  • 映画が好き

    大阪在住の映画好きな者ですが、
    私も良く知る地域の検証が興味深く楽しめました。
    しかしながら、まだ鑑賞していない映画の重要なシーンのネタバレ記述があり、ショックを受けこれには怒りを覚えました。
    作品を見ていない人に対する配慮は必要かと存じます。

    2025年03月07日 02:55

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