珈琲時光、という映画。

先週の自宅待機の日には、TVの地震画像とACのCMの繰り返しにうんざりして、ストックDVDを観ていました。そんなときに妙に沁みてきたのがこの映画。珈琲時光パッケージ01.jpg  別になんにも特別なことは起こらない。(ストーリーがあるといえばあるのですが、説明しても意味はないですね。)アクションや特撮もの、激しいドラマがお好きな方は、途中寝てしまう確率90%、怒りとともにスイッチ切る確率100%です(笑)。

主演はパッケージに写ってる2人なんですが 、本当の主演は町と電車とも言える映画です。

群馬県に実家があって、雑司が谷に暮らしているフリーライターの女の子の日常と、彼女と淡く交わる両親や、電車の音を録音するのが趣味(?)の古本屋の2代目のスケッチが、淡々と続いていきます。

珈琲時光.jpg珈琲時光05.jpg

舞台は雑司が谷・お茶の水・神保町の古本屋+喫茶店・群馬県・夕張と変わっていきますが。常に電車が登場します。

都電荒川線・上信電鉄・山手線はほとんど出ずっぱり(ただし、あくまで景色、としてですから純粋鉄には物足りないかも・・)です。京成・高崎線・夕張線も登場します

珈琲時光03.jpg珈琲時光06.jpg珈琲時光04.jpg

電車の走る東京のスケッチを観ているうちに、ぼんやりゆっくりと2時間が過ぎていく~私にとっては贅沢な時間=映画の主題である、「珈琲を味わうときのように、気持ちを落ち着け、心をリセットし、これからのことを見つめるためのひととき」=そのものですが、時間の無駄じゃ!と怒る人も多いかも・・・

珈琲時光(吉井駅ロケ)06.jpg

上信電鉄の吉井駅近くにある(という設定)主人公の実家のシークエンスが個人的には好きです。

駅の佇まいもうまく捉えられているし、両親と墓参りに行くシーンで、画面を走る上信電鉄の電車がとてもいい感じです。


え~、簡単に言うと、私の鉄写真の撮り方と、この映画の電車の描き方はよく似ている、と感じるのです。


監督の候考賢さんとは個人的に縁があるので、撮影時にも何度か会いました。神田神保町のロケでは少し助っ人も。珈琲時光02.jpg珈琲時光監督.jpg 彼の作品には鉄道がよく出てきます。下はいまや観光スポットにもなっている台鉄平渓線を舞台にした<恋恋風塵>の1シーン。珈琲時光(恋恋風塵)06.jpg そのほかにも<風クイの少年><童年往事><トントンの夏休み>などの作品には、台湾の鉄道が随所に出てきたのが印象的でした。

シャイな映像感覚と、独特のゆったりしたリズム感が好きになって、仕事上の接点を持つことになりました

候監督いわく、鉄道の<時間と空間をつないでいる感じ、互いに知らない人が、ともに移動していく空気感>が好き。とのことです。


 

珈琲時光04.jpg ラストシーンは御茶ノ水のおなじみの景色。バックに流れる<一思案>という曲も、なかなか良いです。

小津安二郎の生誕100年を記念し「東京物語」のオマージュという形で製作された、ということなんですが、僕にはぜんぜん違う感覚の映画に見えます。

「昔から小津映画の影響についてよく聞かれたけど、彼の映画を始めてみたときは途中で寝ちゃった(笑)」とは監督の内緒話です。

少し疲れた休日に、お暇ならご覧ください。レンタルDVDもあるはずです。

元気は出ないが癒される?

途中で寝てしまっても、責任はもてません(念押し)。

この記事へのコメント

  • なにわ

    そういえば、こんな映画ありましたね。一青窈と浅野忠信が出演したのは知ってましたが。

    この喫茶店の画像の切り取り方はcedarさんですか?都心というよりドコかの地方都市に見えます。
    2011年03月26日 18:13
  • やまびこ3

    こんにちは
    この映画見ました。喫茶店のシーンが印象的でした。
    それにしても、コマーシャルなしの番組も作れない民放TV局の実力にはがっかりしてしまいます。
    2011年03月26日 18:28
  • む〜さん

    こんばんわ、余震が減ってきたように思うんですが、如何なんでしょうね?風で窓が鳴ってもビクついている私です。
     「トントンの夏休み」しか見てないです。この映画は良かったなあ・・・・最近見てないので、家のどこかにある、ビデオテープを探そうと思いました。
    2011年03月26日 21:12
  • Cedar

    ■なにわ様
    この映画の主演は一青窈と浅野忠信ですが、私は<街と電車>が主演と思っています。神保町と有楽町の喫茶店のシーンは監督もこだわっていました、でも台湾映画の手法で成り行き重視で撮って行くのですが。
    ■やまびこ3様
    さすがにマニアックな作品もごらんになっていますね。
    コマーシャルなしの番組を民放は作るつもりがないのです。地方局にネットする都合でCM枠は動かせないのですから。
    ■む~さん様
    余震の不安は当分続くようです。こんなときは心を落ち着けて珈琲でも飲んでゆっくり・・・まさにこの映画のような気分で行きましょう。
    「トントンの夏休み」は台湾中部、台鉄の銅鑼という駅の周辺でロケしたとのことでした。
    おじいちゃんの家が日本の田舎の医院そのものでしたね。
    2011年03月27日 01:15
  • manamana

    3本見たことがあります。
    雰囲気は覚えていますが、また見てみたくなりました。
    珈琲時光、自分好みの映画みたいですので、
    こちらも見てみたいです。
    2011年03月27日 07:58
  • Cedar

    ■manamana様
    3本もごらんになったとはすごいですね。
    このCFはご存知でしょうか?演出は候監督です。ちらっと私も絡んでいます。http://ord.yahoo.co.jp/o/video/SIG=15ieiiqqe/EXP=1301270605;_ylt=A3JuMG7Nfo5NNUQBWfyHrPN7;_ylu=X3oDMTBpYm05aW9rBHZ0aWQDanBjMDAzBHlqZANwYw--/*-http%3A//player.video.search.yahoo.co.jp/video/5ad639a9d38d1cf381b86ebced5e6962?p=%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A7%A6%E5%AA%92&b=1&of=&dr=&st=&s=&pd=&ma=&rkf=1&from=srp
    彼の好きな台湾の平渓線が舞台です。
    2011年03月27日 09:05
  • Cedar

    ★nd502様
    nice!ありがとうございます。
    2011年03月27日 10:32
  • サットン

    ほっと一息つける映像を見たくなりますね。
    地震報道も益々ヤジウマ的性格が強くなってきましたし。
    2011年03月27日 20:24
  • maipenrai

    この映画、未見ですがさっそくアマゾンに注文しちゃいました。何年か前、台湾の映画監督、蔡明亮の作品にちょいとハマったことがあります。香港映画が早くから徹底したエンタメ路線なのに、台湾はヌーベルバーグやら小津やら、映画「文化」の匂う映画作家が健在なのが嬉しいです。
    2011年03月27日 21:53
  • Cedar

    ■サットン様
    ハリウッド映画の悪影響で、近年映像がどんどん下品になって来ています。やはりと思ったら、地震報道の際に、某FテレビのDが「もっとすごい画が撮りたい」と叫んでる声が入っちゃったらしいですね。
    映像って、扱いを間違えると暴走しますから。品性卑しい輩が現場にいると厄介です。
    ■maipenrai様
    え~、途中で寝ちゃっても知りませんよ~(笑)。
    ツァイミンリャンもいいですね。  
    候監督作品の私のお勧めは<恋恋風塵>です。台湾のローカル線平渓線が頻繁に登場し、地下化される前の台北駅周辺、宜蘭線の客車列車など鉄分満載です。
    アマゾンで入手できなければ、LDからVHSにしたもの(なんと古い!)は我が家にありますので。レンタル可能です。
    2011年03月28日 00:07
  • 山田みどり

    侯孝賢監督と個人的に知り合いって凄い??中国語が堪能なのですね。羨ま~!私も乗り物は、知らない人同士が一つの空間を共有して降りて行くことが、不思議に感じていました。
    2021年08月10日 20:07

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